農業経営者支援事例

 

農業経営者支援に伴う経営診断

1.農業経営者支援に伴う経営診断について
 農業経営者サポート事業とは、農業者が抱える農業経営の様々な課題や悩みを解決するため、都道府県が整備するサポート事業体制(下図)において、税理士、中小企業診断士などの専門家による支援チームを編成して、個々の農業経営者に対して伴走型で指導等を行う支援事業です。三重県では農家が各地域の農業改良普及センターに支援の申請を行い、三重県農林水産支援センター主催の戦略会議での審議を経て、専門家派遣を決定することになります。

2.支援事例紹介

(1)A農家の支援事例

①支援の経緯

A農家は46haの農地にコメ、麦、大豆等を生産する主穀生産農家である。経営者である76才の父親が病気で倒れ、38才の息子が担い手として農業を引き継いだが平均農家に比べ利益率が半分程度にとどまっており、ドローン導入などスマート農業への投資を考えているが、自信が持てないため、県の普及センターの紹介で、農業者支援を専門とする中小企業診断士の支援を受けることとした。

②支援の内容

1)財務診断

 3期分の決算書を基に、勘定科目ごとに決算値の変化を分析。また、売上高利益率等一連の経営指標分析により、他の農家との相対評価を行い優れた点や問題点を発掘した。これが経営診断の入り口になり、利益率が低位にあること、所得が見劣りすること等を把握できた。

2)ヒアリング調査・分析

 担い手経営者から直接ヒアリングを行い、就農の経緯や過去の取組、成功要因の共有化を行った。また、課題発掘のため、現在のマンパワーや経営体制、土地の確保、資材の調達、生産、加工販売の各分野について現状把握を行った。これにより、担い手経営者がトラクター作業に追われ、販路の拡大、ブランド化に注力できない等の課題が明確になった。

3)戦略分析・立案支援

 作目別の経費分析により、粗利益を把握。利益率の高い作目を優先的に栽培し、トータルの利益を最大化する組み合わせを提案した。また、作目別の労働時間を分析し、時間当たりの利益額を把握、労働生産性の向上を図るための課題の明確化を図った。さらに、現在の経営方針や経営目標の妥当性評価に基づき、あるべき経営の姿を描き、経営戦略の見直し案を提案した。

3.利用の薦め

中小企業診断士が農業支援することのメリットとしては、
1)データに基づく、現状の経営診断により、具体的、客観的な評価ができること
2)過去の取組や成果、現在の強み弱みを踏まえ、戦略策定を農業者の味方になって一緒に考えてくれること
 が一番大きいと思います。


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