経営診断による経営課題特定から伴走支援へ

1.相談企業の概況と診断経緯

 

 A社は創業55年の地元に密着した運送事業者です。冷凍運搬や原木運搬などの地元のニーズに上手く対応し、トラック38台を保有するまでに成長しました。事業内容も、加工作業も伴う物流・倉庫業務の受託、倉庫賃貸し事業など幅広く、取引先業種も多様で優良な事業基盤を持つ企業でした。

 しかし、コロナ禍からの3年間、物流停滞、燃料費の高騰、ドライバー不足からの人件費の上昇など経営環境の変化で、A社は受注減に加えて経費上昇で連続赤字へと低迷してしまいました。知り合いの社長さんから、窮状のA社を紹介され、中小企業診断士による経営支援が始まりました。

 

2.経営診断から窮境原因特定

 

 経営支援は、まずA社経営幹部とのミーティングで現状確認から財務分析、事業分析を実施し、根本的な問題点を特定しました。

当初A社は、コロナ禍の影響が一過性で、業績は回復すると期待していましたが、経営診断では、周辺事業で資金を回し、本業の儲ける力が構造的に低下していることに気づかなかった現状が明らかになりました。窮境の原因を、「環境変化への認識不足と、経営改善への対応が遅れたマネジメント力」にあると特定し、短期的な対応方針と、中長期的な課題を纏めました。

 

3.解決課題と伴走支援

 

3-1.短期的課題

 短期的な課題は、運送原価が適切に把握できおらず、対応が遅れていた燃料費や諸物価上昇の取引先様への価格転嫁への取り組みです。さらに迫る物流2024年度問題への対応(長時間労働防止・勤務時間インターバル設置)があり、これらの課題に対処するための緊急プロジェクトをスタートさせました。

 

3-2.中長期的課題

 

 中長期的な課題は、社長1人が指図を行う個人的な業務遂行から、運行管理者に任せ、配車ソフトの活用で仕組みにより運送効率を上げられる会社組織への変革で、後継者世代への事業承継に向けた変革です。物流DX(GSP・デジタコ・AI活用)の計画的な導入や、配車等管理者の育成、ドライバーの教育・評価制度、マネジメントシステムとしてのGマーク(安全性優良事業所)やISOの認定チャレンジなどが具体的な目標とされました。

 

 これらの課題の克服に向けて、中小企業診断士は実現に向けて伴走支援を行っており、ビジネス全般にわたる幅広い視点から経営改善への取り組みが始まっています。

 


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